2026 06 19より少ないもので、より多くを素材に向き合っていると、
その表面に時間が静かに積もっていくのを感じることがあります。
何かを足したり引いたりしなくても、痕跡は残る。
そこには確かに過ぎてきた時間の記録があって、
デザインはそれを消すのではなく、そっと見えるようにするものなのかもしれません。

最近、「少ないものでつくる」ということについて考えるようになりました。
きっかけは、ヴィクター・パパネックの Design for the Real World を読んでいたときです。
序文を書いていたバックミンスター・フラーの
“doing more with less” という一文が心に残りました。

答えをくれる言葉ではなかったけれど、
考えるための場所をひらいてくれた気がします。
素材がこれから何になるかだけでなく、
その表面にすでに宿っている時間を見るという視点です。

そして自分の仕事に戻ると、
その言葉がものの見え方を少し変えているのに気づきます。
デザインには何が宿るのか。
つくられたものだけでなく、
失われたあとに立ち上がってくるものも含めて。

空間をつくることは、
誰かの注意の向け方を形づくることでもあるのかもしれません。
素材はやがて色あせ、
空間は更新されていく。
それでも、その中にあった経験は、別のかたちで残り続けます。


2025 11 03引き出しの中の思い出今朝、昔使っていたパソコンを取り出しました。
16年前、ウェリントンへ移住するときに持ってきたものです。
引き出しの奥に眠っていたそれを、テーブルの上にそっと置きました。

画面を開けると、すり減ったキーボードが目に入ります。
ひとつ押してみる。
これ、使ってたんだ。
そんな言葉がこぼれました。

ロンドンで学生をしていた頃、母が日本から持ってきてくれたパソコン。
あれからもう20年以上。
当時の机や椅子の感触まで、ふと蘇ります。

課題に向き合っていた日々も、
就職してからの間も、
もう細かくは思い出せません。

年明けのメルボルンへの引っ越しを前に、ようやく整理を始めました。
長いあいだ向き合えずにいた時間です。

電源を入れてみたけど、起動しません。
きっと、これでお別れなのでしょう。

学生時代の相棒のようだった日々も、
しまい込んで忘れていた年月も、
全部ひっくるめて。

今までずっと、ありがとう。

2025 09 17プロセスときどき、私たちの『見え方』は、本来そこに広がっていたはずのもを狭めてしまうことがあります。
その結果、目の前にあった豊かさを見落としてしまうことがあるのです。

あふれるイメージや印象の中で、その背後にある物語を、私はしばしば見過ごしてしまいます。

だからこそ、『気づく』という瞬間は、こんなにも心を揺らすのだと感じるのです。

昨夜、フランシスケレの講演を聞きに行きました。
あの時間は、本当に贅沢でした。

ケレのものづくりは、土地と人へのまっすぐな応答そのものです。
そこにあるものをどう生かすのか、そこに暮らす人たちとどうつながるのか。

その問いかけは、彼自身が手を動かし、人と一緒に『つくってきた』経験から生まれたもので、その姿勢は驚くほど確かな形となって現れていました。

彼の言葉のひとつひとつには、真実味が宿っていました。その言葉は、彼の目の奥に灯る光によって、さらに深く照らされていたのです。

2025 07 08君に会いに行くよ子どもたちと動物園を歩き、きりんのいる場所までゆっくりと向かいました。 私にとってきりんはずっと好きな動物で、園のいちばん奥、丘の上で自然体で過ごすその姿は、まるで最後に残されたお待ちかねの光景です。

その模様を見るたびに、いつも足が止まります。

冬の空へすっと伸びていく長い首に、やわらかな土色の模様が淡く浮かび上がり、 冷たい空の光の中で、その存在がそっと息づいている ように見えるのです。

2025 06 14感触 連日で雨が続き、気分は熊が冬眠の支度にはいるようでした。ブランケットを羽織り、家の中でじっとしていたい。病は気から、正にそれで、精神的に応える一週間。

そんなグレーな色がこころにうずまく中、今週初めてお話しをする方々が3人。よりによって薄暗く寒さが骨に染みるような外で。

たわいのない話しをしていくうちに、気づくのはその方々の表情。

ふわっと浮かぶ笑顔に、危なっかしく尖った氷の破片が溶けるような感触を覚えた。


2025 06 03マウリオラタイパリ私の住むニュージーランドは島国で、マオリの人々がこの土地の先住民族です。

彼らが育んできた文化や世界観は、風土に根ざしていて、私にとってはこころをそっと整えてくれるような存在です。

たとえば、波打ち際。

私たち一人ひとりには、「マウリ」 という命のエネルギーがあり、それは潮のように日々ゆるやかに変化していきます。

マオリの世界では、潮のリズムは私たちの内なる感情や直感 「カレ・ア・ロト」 を映すものとされ、夢やビジョン「モエモエア」 もそこに含まれます。

海はその流れに抗わず、ただあるがままに動きながら、手放しや癒しの空間 「ファカワー テア」 を与えてくれます。

波打ち際に立つとき、そのままでいいよ、と静かに語りかけられているような気がするのです。



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2025 05 30ハートのかたち「お母さん、ワッフルメーカー買って!」

友人宅でのお泊まり会から帰ってきた息子が、開口一番にそう言った。朝ごはんにワッフルをふるまっていただいたらしい。

うちでは、あんなものは一時のガジェットにすぎないと思っていて、買う気はまったくなかった。けれど、たまたま中古の良品に出会って、思いがけず購入することに。

生地はパンケーキよりもゆるめ。プレスして、2分も経たないうちに焼きあがる。

これは使える。フライパンでパンケーキを焼くより、ずっと手軽だ。

ワッフルの切れ目に、子どもたちはナイフをあてる。ナイフとフォークを使う練習にもってこいだ。

切り取られたハート型のワッフルが、ワッフルメーカーの便利さや、子どもたちの成長、週末の幸せなひとときを象徴しているように思えた。



2025 05 25ひとりごと
本当は、私たちは常に美に囲まれて生きています。

けれど、いつの間にか毎日はタスクの積み重ねになり、「生きること」 がただの作業のように感じられるようになっていました。

気づけば、周囲の情報に振り回されながら、いったい何年が過ぎたのだろう。

そんなふうに感じることが増えてきて、最近は、日々のささやかな出会いや季節の移ろい、ふと湧いてくる感情や気づきに、少し目を向けてみたくなりました。

そんな瞬間を、言葉や写真でそっと残していけたらと思っています。

どれだけ続けられるかはわからないけれど、自分自身のためにも、記してみることから始めてみようと思います。



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