その表面に時間が静かに積もっていくのを感じることがあります。
何かを足したり引いたりしなくても、痕跡は残る。
そこには確かに過ぎてきた時間の記録があって、
デザインはそれを消すのではなく、そっと見えるようにするものなのかもしれません。
最近、「少ないものでつくる」ということについて考えるようになりました。
きっかけは、ヴィクター・パパネックの Design for the Real World を読んでいたときです。
序文を書いていたバックミンスター・フラーの
“doing more with less” という一文が心に残りました。
答えをくれる言葉ではなかったけれど、
考えるための場所をひらいてくれた気がします。
素材がこれから何になるかだけでなく、
その表面にすでに宿っている時間を見るという視点です。
そして自分の仕事に戻ると、
その言葉がものの見え方を少し変えているのに気づきます。
デザインには何が宿るのか。
つくられたものだけでなく、
失われたあとに立ち上がってくるものも含めて。
空間をつくることは、
誰かの注意の向け方を形づくることでもあるのかもしれません。
素材はやがて色あせ、
空間は更新されていく。
それでも、その中にあった経験は、別のかたちで残り続けます。